Share

第22話 奪われた魔法

last update Tanggal publikasi: 2026-10-05 22:38:54

第22話 奪われた魔法

 神崎蓮が妹の捜索へ出る予定だった朝、その出発は一時間だけ延期された。

 原因は天城澪だった。

「一時間だけ。これを確認しないまま外へ出すほうが危険だから」

 通信施設の地下倉庫でそう言われた蓮は、腰へ差した剣を見下ろしながら露骨に嫌そうな顔をした。昨夜までの話では、夜明けとともに旧浄水施設方面へ向かう予定だった。それが荷物を背負い、同行する防衛班の二人まで準備を終えたところで、「解析室へ来て」と呼び止められたのである。

「美咲の手掛かりは八日前だぞ。時間が経つほど追いにくくなるって、高城も言ってた」

「だから一時間だけと言ってるでしょう。今から見せるものを見たら、たぶんあなたも文句を言わなくなる」

「その言い方、ろくなものじゃない時のやつだよな」

「よく分かってきたわね」

「嬉しくない成長だな」

 倉庫の中央には、捕獲した対魔法

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Bab Terkunci

Bab terbaru

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第45話 家族を連れて東京へ

    第45話 家族を連れて東京へ 山岳地下備蓄庫を出てから東京の生存圏へ戻るまでには、結局二日近くかかった。 行きより遅くなった最大の理由は、負傷者を連れていたからだ。 行きの捜索隊なら多少の悪路は力で押し切れたが、帰りはそうはいかない。担架を持つ人間の足場が崩れれば、それだけで患者の命に関わる。M-01の再襲撃まであった以上、隊列を急がせたい気持ちは全員にあったものの、高城は決して速度を上げなかった。「早く帰ることと、無事に帰ることは別だ」 何度目かの休憩で、高城はそう言った。 蓮には、その言葉が妙に耳へ残った。 以前なら、自分は前者ばかりを考えていた。 早く助ける。 早く倒す。 早く辿り着く。 けれど今回の山岳捜索で、何度も足を止めた。 結果として父も母も美咲も生きている。 負傷者も連れて帰っている。 遅れることが、いつも間違いというわけではないらしい。「蓮兄、また難しい顔してる」 隣を歩いていた美咲に言われ、蓮は顔を上げた。「そんな顔してた?」「してた。昔から考え事すると眉間に皺寄るよね」「お前も人のこと言えないだろ」「私はもっと分かりにくい」「自分で言う?」「七年分の経験がありますから」「またそれ使う」 美咲は少し笑い、前を歩く由美子へ視線を向けた。 母は美奈のそばで、搬送している負傷者の様子を確認している。 正彦は宮本と並び、途中で使えそうな放置車両がないか周囲を見ながら歩いていた。「お父さんとお母さん、思ったより元気だね」 美咲が言う。「美咲もな」

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第44話 M-01は死なない

    第44話 M-01は死なない 東京へ戻る準備は、夜が明ける前から始まっていた。 山岳地下備蓄庫に残っていた七人の生存者のうち、自力で長距離を歩けるのは五人だけだった。残る二人は美奈の治療によって容体こそ安定したものの、山道を何時間も歩かせれば再び悪化する可能性が高い。 そのため宮本たちは、備蓄庫に残っていた古い資材を使って簡易担架を二台作った。「これ、見た目より頑丈ですね」 伊藤が担架の取っ手を持ち上げながら言う。 宮本は少し得意そうに鼻を鳴らした。「見た目で判断しないでください。建設現場にいた人間は、壊れた物から使える物を作るのが仕事みたいな時期がありますから」「現場監督ってそんな仕事でしたっけ」「人手が足りなければ何でもやります。監督だからって図面だけ持って立ってたら、現場の人間に嫌われますよ」「妙に実感ありますね」「ありますからね」 宮本はそう答えながら、最後の結束具を締めた。 その少し離れた場所では、由美子が持ち出す医薬品や食料を箱ごとに分けていた。昨日まで救助される側だったはずなのに、今朝にはもう周囲の人間へ指示を出している。「この箱は東京へ持っていく分。こっちは道中で使う分だから一緒に積まないでください。あと、包帯は医療班の近くへ置いておいたほうがいいと思います」 高城が確認する。「重量は大丈夫ですか」「全部持っていこうとしたら無理です。優先順位をつけました。抗生剤、消毒薬、止血材、栄養補助食品。それ以外は場所を記録して、また取りに来ればいいでしょう」「判断が早いですね」 由美子は少し笑った。「こういう生活、もう長いので」 その声を聞いた蓮は、少し離れた壁際で剣の状態を確認しながら複雑な気分になった。 帰ってきた時、自分

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第43話 四人家族

    第43話 四人家族 神崎家の四人が同じ場所に揃ったからといって、七年前の続きをそのまま始められるわけではなかった。 父の正彦は七年分老い、母の由美子は以前より髪を短くしていた。美咲は高校生ではなく、自分より幼い子供たちを守って山中を歩ける大人になっている。そして蓮自身も、見た目こそ二十八歳前後でも、異世界で二十二年を過ごし、家族の誰も知らない人生を背負って帰ってきた。 それでも、四人で狭い医療保管区画の床へ座り、保存食を囲んでいると、不思議なほど昔と変わらない瞬間が混じった。「だから蓮、その缶詰は美咲に先に渡しなさい」 由美子に言われ、蓮は手に持った鯖の缶詰を見た。「何で?」「美咲は右腕を怪我してるでしょう」「怪我してると鯖が優先されるの?」「栄養が必要なの」「俺も肩撃たれてるんだけど」「あなたは元気そうだから後」「判断雑じゃない?」 美咲が横から缶詰を取った。「じゃあ私もらうね」「待てよ。今の会話で俺に返そうとは思わなかった?」「全然」「七年ぶりの兄にもう少し優しくしてもいいだろ」「七年いなかった兄に?」「そこ持ち出されたら何も言えない」 正彦が蓋を開けた別の缶詰を見ながら、少し笑った。「昔からそうだったな。蓮は家に帰ってくると、冷蔵庫の中の物を自分のものみたいに食べる」「家族の冷蔵庫なんだからいいだろ」「それで美咲のプリン食べた」「またその話?」 美咲が鯖を箸でほぐしながら言った。「それは一生言うよ。私、名前書いてたからね」「小学生の名前シールみたいに書くからだろ」「名前があっても食べる

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第42話 七年ぶりの妹

    第42話 七年ぶりの妹 美咲が救出されたと聞いてから、実際にその姿を見るまでの十分間は、神崎蓮にとって、これまで経験したどの戦闘よりも長く感じられた。 M-01の追撃を振り切り、高城たちが確保した退路へ入ってからも、蓮は何度も前方へ視線を向けた。美咲は先に美奈たちと移動していると分かっている。それでも、人影が見えるたびに妹ではないかと思ってしまう。「走るなよ」 隣を歩く冬真が言った。「走ってない」「今、三回くらい速度を上げた」「そんな細かいところまで見てるの?」「お前は分かりやすい」「今日だけで何回それ言われるんだろ」 蓮は苦笑した。 敵の追撃が完全に途切れたわけではない。後方では高城たちが警戒を続けており、M-01が再び姿を現す可能性も残っている。それでも、美咲がいる場所まであと少しだと思うと、意識の半分以上がそちらへ持っていかれる。「会ったら何を言う」 冬真が不意に聞いた。「知らない」「昨日から散々考えていたんじゃないのか」「考えてた。でも、実際会うとなると何も出てこない」「謝るんだろう」「それは言う」「それ以外は」「だから分からないって」 蓮は少し考えてから続けた。「たぶん、顔見たら何か出ると思う」「随分曖昧だな」「家族ってそういうもんじゃない?」「俺に聞くな」 冬真の声がわずかに低くなったため、蓮はそれ以上聞かなかった。 やがて通路の先に、人が集まっている場所が見えた。 簡易照明が設置され、その下で美奈が誰かの腕へ包帯を巻いている。高城の部下が数人、周囲を警戒しながら立っていた。

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第42話 七年ぶりの妹

    第42話 七年ぶりの妹 美咲が救出されたと聞いてから、実際にその姿を見るまでの十分間は、神崎蓮にとって、これまで経験したどの戦闘よりも長く感じられた。 M-01の追撃を振り切り、高城たちが確保した退路へ入ってからも、蓮は何度も前方へ視線を向けた。美咲は先に美奈たちと移動していると分かっている。それでも、人影が見えるたびに妹ではないかと思ってしまう。「走るなよ」 隣を歩く冬真が言った。「走ってない」「今、三回くらい速度を上げた」「そんな細かいところまで見てるの?」「お前は分かりやすい」「今日だけで何回それ言われるんだろ」 蓮は苦笑した。 敵の追撃が完全に途切れたわけではない。後方では高城たちが警戒を続けており、M-01が再び姿を現す可能性も残っている。それでも、美咲がいる場所まであと少しだと思うと、意識の半分以上がそちらへ持っていかれる。「会ったら何を言う」 冬真が不意に聞いた。「知らない」「昨日から散々考えていたんじゃないのか」「考えてた。でも、実際会うとなると何も出てこない」「謝るんだろう」「それは言う」「それ以外は」「だから分からないって」 蓮は少し考えてから続けた。「たぶん、顔見たら何か出ると思う」「随分曖昧だな」「家族ってそういうもんじゃない?」「俺に聞くな」 冬真の声がわずかに低くなったため、蓮はそれ以上聞かなかった。 やがて通路の先に、人が集まっている場所が見えた。 簡易照明が設置され、その下で美奈が誰かの腕へ包帯を巻いている。高城の部下が数人、周囲を警戒しながら立っていた。

  • AIが世界を滅ぼした日、異世界帰りの俺たちが帰還した ~人類九割死亡の終末世界で、勇者と魔法使いと賢者が地球を奪還する~   第41話 偽物の勇者

    第41話 偽物の勇者『境界切断』 人工音声が告げた直後、M-01の剣から放たれた黒い線が、旧実験区画前の空間を一直線に裂いた。 蓮は避けなかった。 正確には、避けるという判断を取る余裕がなかった。 機械が構えを完成させた瞬間、その一撃がこれまでの模倣とは明らかに違うと分かったからだ。切断する対象を大雑把にまとめていた以前の攻撃ではない。蓮が《境界断ち》を使う時と同じように、物質と空間、魔力障壁とその外側を別々に認識した上で、一つの線へ束ねている。「冬真、真正面は無理だ!」「言われなくても分かる!」 二人は同時に左右へ散った。 次の瞬間、黒い切断線が二人のいた場所を通り過ぎ、背後の岩壁へ食い込んだ。 轟音はなかった。 むしろ、その静かさが不気味だった。 厚い岩盤は爆発したわけでも砕けたわけでもなく、最初から二つの別々の物だったかのように滑らかにずれ落ちた。さらにその向こうに設置されていた古い防護板まで同時に切断され、遅れて金属が地面へ落ちる音が響く。 蓮はその断面を見て、思わず奥歯を噛んだ。「……近い」 冬真が問い返す。「何がだ」「俺の《境界断ち》に。威力だけじゃなくて、切り分け方まで近づいてる」 認めたくない。 けれど、否定しても仕方がない。 昨日までのM-01は、境界というものを無理やり引き裂いていた。だから攻撃は強くても粗く、蓮から見れば「似ているだけ」の技だった。 今の一撃には、選別がある。 切るべきものと、切らなくていいものを分けようとしている。 そこまで学んだ。 ほんの数回の戦闘で。「気分悪いな」 蓮

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status